「代理店に運用を任せているのに、なかなか成果が出ない」——これは多くの企業が抱える悩みです。ただ、こうした悩みを整理していくと、原因が「代理店側」にあるケースと「自社側」にあるケースの両方が混在していることが少なくありません。この記事では、両方の可能性を切り分けて考えるための視点を紹介します。
代理店を一方的に責めても、自社を必要以上に責めても、根本的な解決にはつながりません。大切なのは、感情的にならず、構造的に何が起きているのかを整理することです。
この記事のポイント
- 代理店側の原因:担当者の稼働状況、報告だけで終わるレポート、得意分野に偏った提案
- 自社側の原因:目的・KPIの曖昧さ、情報共有不足、判断軸の不在、窓口の分散
- どちらに原因があるかを見分ける3つの質問を紹介
「代理店の問題」と「自社の問題」は分けて考える
成果が出ないとき、多くの人はまず「代理店の実力不足では」と考えます。もちろんそのケースもありますが、実際には自社側の関わり方に原因があることも珍しくありません。
大切なのは、どちらか一方を決めつけて動くのではなく、両方の可能性を一度並べて確認することです。原因を取り違えたまま代理店を変更しても、同じ問題が再発するだけになりかねません。
代理店側に原因があるケース
まず、代理店側に起因することが多い原因を整理します。
担当者が複数クライアントを抱え、十分な検証時間が取れない
広告代理店の担当者は、多くの場合、複数のクライアントを同時に担当しています。抱えるクライアント数が多いほど、1社あたりにかけられる分析・改善の時間は限られます。特に、予算規模が小さいクライアントほど、後回しにされやすい傾向があるのは構造上避けにくい面があります。
実際に代理店側で複数クライアントを担当していた経験からも、この構造は実感としてあります。悪気があるわけではなく、時間という有限のリソースをどう配分するかという、構造上避けにくい問題です。だからこそ事業側も、どれだけの時間を割いてもらえているかを意識しておくことに意味があります。
レポートが数字の報告だけで、次の提案がない
「CPAが〇〇円でした」「CVRが〇%でした」という数字の報告だけで終わり、「では次に何をするか」という提案が伴わない場合、施策は前に進みません。数字は結果であって、原因ではありません。原因を分析し、次のアクションに繋げるプロセスがなければ、運用は現状維持のまま停滞してしまいます。
得意な媒体・手法に偏った提案になっている
代理店には、それぞれ得意とする媒体や手法があります。リスティング広告が得意な代理店は、業種や商材によってはSNS広告のほうが向いているケースでも、慣れた手法を優先して提案してしまうことがあります。悪意があるわけではなく、専門性の偏りとして自然に起こりうることですが、結果として自社に最適な選択肢が提示されていない可能性があります。
自社側に原因があるケース
一方で、自社側の関わり方が成果を左右しているケースも多くあります。
目的・KPIが曖昧なまま依頼している
「売上を増やしたい」という漠然とした要望だけを伝えている場合、代理店側もCPAを重視すべきか、CV数を重視すべきか、戦略の方向性を定めることができません。何を達成したいのかが具体的であるほど、代理店は的確な施策を組み立てやすくなります。
事業の背景情報を共有できていない
代理店は、基本的に「共有された情報」の範囲でしか判断できません。新商品の情報、ターゲット層の変化、競合の動き、季節要因といった事業側の情報を共有しないまま「成果を出してください」と依頼するのは、代理店にとってかなりハードルの高い注文です。広告のクリエイティブや入札戦略の精度は、商品・顧客・市場への理解があってこそ上がります。
提案を評価する判断軸を持たないまま任せきりにしている
「専門家だから」とすべてを任せきりにしてしまうのも、成果が出ない要因のひとつです。代理店からの提案が本当に事業にとって適切かどうかを、自社側で確認する視点がないまま進めると、良い提案も悪い提案も同じように受け入れてしまうことになります。
複数の窓口が分散し、全体を見ている人がいない
広告は代理店、サイトは制作会社、SNSは別の担当者、というように依頼先や担当者が分散している場合、それぞれの施策が個別最適で進んでしまい、全体として何を優先すべきかを判断する人が誰もいない状態に陥ります。この場合、代理店の運用そのものに問題がなくても、施策間の連携不足によって成果が伸び悩むことがあります。
見分け方:どちらに原因があるかを確認する3つの質問
自社側・代理店側、どちらに原因が寄っているかを見極めるために、以下の3つを自問してみてください。
- 目的とKPIを、具体的な数字で代理店に伝えているか:伝えていない場合、自社側の準備不足の可能性があります
- 直近の提案で、「なぜその施策なのか」の説明を受けたか:説明がなければ、代理店側の提案姿勢に課題がある可能性があります
- レポートを受け取った後、内容について質問したことがあるか:一度もない場合、判断を任せきりにしている可能性があります
多くの場合、原因は片方だけでなく両方に少しずつ存在します。まずはこの3つを確認し、自社側で改善できる部分から着手することをおすすめします。
原因のおおまかな傾向を整理すると、以下のようになります。
| 症状 | 原因が寄りやすい側 |
|---|---|
| 目的を伝えても、施策の説明が一般論で終わる | 代理店側 |
| そもそも目的やゴールの数字を伝えていない | 自社側 |
| レポートに改善提案が含まれていない | 代理店側 |
| レポートを受け取っても内容を確認していない | 自社側 |
| 新商品や競合の動きを共有していない | 自社側 |
| 同じ施策が何ヶ月も変わらず続いている | 代理店側 |
この表はあくまで傾向であり、断定するためのものではありません。まずは自社側の項目から確認し、改善できる点があれば着手した上で、それでも状況が変わらない場合に代理店側の要因を検討する、という順番がおすすめです。
自社だけで判断するのが難しいと感じたら、無料相談で一緒に整理しませんか?
無料相談はこちら代理店を変えても解決しないケースがある理由
成果が出ないとき、最も手っ取り早い解決策に見えるのが「代理店を変える」ことです。しかし、自社側の目的が曖昧なまま、情報共有の姿勢も変わらないままで代理店だけを変更すると、新しい代理店でも同じ状況が再発する可能性があります。
代理店の変更には、アカウントの引き継ぎ、新しい担当者への事業説明、初期の学習期間など、相応の手間と時間がかかります。仮に自社側の課題が原因だった場合、この手間をかけても数ヶ月後には同じ不満が再発することになりかねません。
代理店を変更する前に、まずは自社側の関わり方(目的の明確化、情報共有、提案への確認)を見直すことをおすすめします。それでも改善が見られない場合、初めて代理店側の実力や相性の問題として、変更を検討する段階に入ります。
なお、自社側の課題を整理した上でなお判断がつかない場合は、代理店でも制作会社でもない第三者に、現状を一緒に整理してもらうという方法もあります。専門知識がなくても、事業目線で「どこに課題があるのか」を切り分けてもらえることで、代理店を変えるべきか、関わり方を変えるべきかの判断がしやすくなります。
まとめ
広告代理店に任せても成果が出ない理由は、代理店側の事情(担当者の稼働状況、提案姿勢)と、自社側の事情(目的の曖昧さ、情報共有の不足、判断軸の不在)の両方に存在します。どちらか一方だけを疑うのではなく、まずは自社側で確認・改善できる部分から着手し、それでも変わらない場合に代理店側の見直しを検討する、という順番が遠回りを防ぎます。
自社側で「何を確認すればいいか分からない」「提案の良し悪しを判断する軸がない」という場合は、事業側の視点で一緒に整理してくれるパートナーに相談することも、ひとつの選択肢です。
よくある質問
Q代理店の実力を見極める方法はありますか?
A提案に対して「なぜその施策なのか」を質問したときの回答の具体性で、ある程度見極められます。自社の状況を踏まえた説明ができるかどうかを確認してみてください。
Q自社の情報共有が不足しているかどうかは、どう判断すればいいですか?
A直近3ヶ月で、新商品情報やターゲットの変化、競合の動きなどを代理店に伝えたかどうかを振り返ってみてください。伝えていない情報があれば、それが判断のヒントになります。
Q目的やKPIをどう設定すればいいか分かりません。
A「売上を増やす」ではなく、「問い合わせ数を月〇件にする」など、行動として測定できる数字に落とし込むことが第一歩です。数字の設定自体に迷う場合は、事業側の視点で一緒に整理できる相談先を頼るのもひとつの方法です。
Q代理店に不満があることを伝えると、関係が悪くなりませんか?
A建設的な確認であれば、関係が悪化することは基本的にありません。むしろ、目的や状況を共有することで、代理店側もより的確な提案がしやすくなります。
Qどのくらいの期間で成果が出ないと判断すべきですか?
A施策の種類によって異なりますが、広告運用であれば数ヶ月、SEOであれば半年程度は様子を見る必要があります。ただし、その間もレポート内容や提案の質を継続的に確認することが前提です。
Q複数の代理店(広告・SEO・制作)に依頼していますが、それぞれ言うことが違います。
Aそれぞれの代理店は自分の担当範囲の中でしか判断できないため、意見が異なるのは自然なことです。全体を俯瞰して優先順位を判断する役割が社内または外部に必要になります。
Q自社側にもかなり原因がありそうです。何から改善すればいいですか?
Aまずは目的とKPIを具体的な数字に落とし込むことから始めてください。次に、直近の事業の変化(新商品、競合の動き、季節要因など)を代理店に共有する習慣をつけることで、提案の精度は大きく変わります。